よく認知療法という言葉を聞きます。この場合の認知とはどういう意味ですか?

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よく認知療法という言葉を聞きます。この場合の認知とはどういう意味ですか?


私たちが生活する上でごく自然に心のなかに生まれてくる“思考”、あるいは“ものの見方”のことです。



 あがり症や対人恐怖といった社会不安は、私たちがものごとをどう「認知」しているか、ということと密接に関わりあっています。では「認知」とはいったい何をさすのでしょうか。


他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.88より


 <認知>とはなにか?これは要するに、私たちが生活する上でごく自然に心のなかに生まれてくる<思考>、あるいは<ものの見方>のことである。別の言い方をすれば、心のなかのつぶやき、あるいは、自分自身との対話のようなものだ。

 たとえば、読者のみなさんも、こんなことをふと思ったことはないだろうか?何かをしようとした時に「うまくいかないに決まってるさ」、人前で話をする前に「きっとしどろもどろになってしまうだろう」、気になる異性と出会う前に「ぼくのことを変なヤツだと思うに決まってる」、パーティーに招待された翌日に「私なんか、もう二度と招待してくれないでしょうね」、友だちと議論をした翌日に「あんなこと言わなければよかった」……。

 こうした「心のつぶやき」は、本人がその時の状況をどようにとらえているか、ということをよく表している。


 本書によれば、ある状況に対して緊張や不安を強く感じた人は、顔が赤くなる、手に汗をかく、身体が震える、声がうわずるといった身体反応と同じくらいすばやく、ほぼ反射的に、その状況について何らかの考えを抱くといいます。

 そして、それはたいていの場合、「そうかもしれない」という“仮定”ではなく、「そうにちがいない」、「そうに決まっている」のように、多かれ少なかれ“確信”や“断定”の形で心のなかに現れます。

 あがり症や対人恐怖を強く感じる人の場合はとくに、この“ある特定の考え方がパターン化してしまう(固執してしまう)傾向”が強いといいます。たとえ、その固執した考え方や特定のパターンが“事実に反している”、あるいは“科学的に根拠が全くない”ものだとしても、いつも同じような思考がことあるごとに意識のなかに入り込んでくる。それはまさに偏った“思い込み”が起きています。

 この思い込みはなかなか根が深いものなので簡単には修正できない。これがあがり症や対人恐怖といった社会不安を根本から改善させる難しさの一つの要因となっています。

 あがり症や対人恐怖を根本的に治癒していくには、こうした“強い思い込み”を正しく修正すること。多様な価値観を受け入れ、幅広く柔軟なものの見方ができるようになることが必要です。これを目標としているのがまさに“認知療法”(※)なのです。

 ※認知療法とは、アーロン・ベック(認知療法、もしくは認知行動療法)やアルバート・エリス(論理療法)やドナルド・マイケンバウム(自己教示訓練)によって、それぞれ独立に始められた心理療法の総称であり、うつ病や不安障害に科学的に証明された確実な効果が認められている。他の治療法より短い時間で効果が大きいことが証明されており、アメリカの保険会社やイギリス政府は治療効果を承認している。(ウィキペディアより