遺伝的に不安や緊張を感じやすい人とそうでない人はいますか?

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友人や知り合いには全く不安や緊張を感じない人がいます。そういう友人を見ていて思うのですが、そもそも遺伝的な問題な気がします。遺伝的に「不安や緊張を感じやすい人」と「そうでない人」はいるのでしょうか?





もともとその人の個性として不安を感じやすい人と感じにくい人がいることは事実です



精神科医が書いたあがり症はなぜ治せるようになったのか
(木村昌幹著、現代書林)P.94より


 もともとその人の個性として不安を感じやすい人と感じにくい人がいることは事実です。不安を感じやすい人は、それだけSAD発症の危険も大きいと考えられます。

 この不安を感じやすいという性質も、遺伝することがわかっています。

 不安をコントロールしている脳内物質のひとつに「セロトニン」があり、これが十分にはたらく人は不安を感じにくいわけです。ところが、セロトニンを運搬する「セロトニン・トランスポーター」の遺伝子が短い人はセロトニンを有効利用しにくいために、不安を感じやすくなるのではないかと言われています。


 少し専門的な話になってしまいますが、セロトニントランスポーター遺伝子とは、不安をコントロールしている脳内物質のひとつである「セロトニンの伝達に関係する遺伝情報が書き込まれた遺伝子」のことです。遺伝子にも様々な型があり、型によって不安の感じやすさが異なります。

 昔から、日本人はその他の国の人々と比較してプレッシャーに弱いと言われています。これは日本人の多くが本書で紹介されている“不安型の遺伝子”をもっているためと言われています。

 一方で、一般的に楽天的といわれるラテン系の人々(ラテン語を起源とする言語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語などを母語とする人々)は不安に強い遺伝子を持っているとも言われています。実際、ラテンアメリカ系の国々の自殺率は、日本に比べてはるかに低いのです。

 ですから、そもそも遺伝的な問題で、「不安や緊張を感じやすい人」と「そうでない人」がいることは事実です。

 また、この分野における第一人者のひとり、米ハーバード大学のジェローム・ケイガン教授の白色人種の児童たちを対象にした研究で、“およそ15〜20%の子供が、生まれながらにして内気、または人見知りの傾向を示す生物学的特徴を備えていた”ことが判明しています。


他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.190より


 私たちの脳には、不安などの感情を司る「扁桃体」と呼ばれる器官があり、この子どもたちはそこに共通の特徴があった。要するに、彼らの扁桃体は、受けたストレスに対してふつうより過剰に反応していたのである。

 ケイガン教授はインタビューでこう述べている《こういう内気な子が初めて幼稚園に行く時は、古代ローマの剣士が闘技場で猛獣に立ち向かうのと同じくらいのストレスを感じているのだ……》。


 ケイガン教授の研究によれば、生まれたばかりの子どもは、遺伝的な影響によって、

「知らないところにあえて近づこうとする子」

「知らないところを極力避けようとする子」

 のどちらかになるといいます。生後四ヶ月で見知らぬ人や初めての場所に対してすねたり泣き出したりする子は、生後9ヶ月でも、一歳でも、二歳でも同様の反応を見せます。