自分の考えや感情、不安に感じことを書き出すのが効果的だと聞きました

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強いプレッシャーやストレス、緊張に悩まされている時、自分の考えや感情、不安に感じていることを書き出すことが効果的だと聞きましたが、これは本当ですか?




感情を言葉に表す、書き出すことでストレスに満ちた情報に脳が対処する方法が変わります。これは非常に効果的であることが研究結果でも証明されています。





なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.194より


 ジェラードはシカゴ大学のおもに白人の成績優秀な学生グループに、難しい数学のテストを受けてもらい、徐々にストレスの度合いを強めていった。私たちはいつものプレッシャーをかけるための手段を利用した。

 点数がよければ20ドルを支給し、成績が悪ければ、お金をもらえることを期待しているパートナーににも響くと警告することなどである。ビデオも撮影し、テストの様子を知るために数学教授をはじめとする教員がビデオを見ることになっているとも伝えた。

 このテストにどれだけのものがかかっているのか伝えた直後に、一部の学生にはこれから受けるテストにたいする考えや気持ちについて、10分間で書いてもらった。

 私たちは学生にプレッシャーによって胸につかえているものを吐きだしてもらいたかったため、名前から書いた内容を探ることはできないので、気がかりなことについて包み隠さず自由に書いてほしいと伝えた。残りの学生には書く機会は与えられず、ただ実験者がテスト材料を用意するあいだじっと座って待ってもらった。(中略)

 数学のテストが行われる前に心配ごとについて10分間書いた学生は、試験前に何もせずに座っていた学生よりもおよそ15%点数がよかったのだ。


 人は迫りくるプレッシャーについて意識的に思いをめぐらせるので、心配ごとについて書くことはよりプレッシャーを増加しかねないと考えることもできます。ただ、不安や心配について書くことの利点は多くの研究結果によって証明されているのも事実です。

 心理学者のジェームズ・ペネベイカーの研究チームは、人生のストレス要因について数週間書いたあと、人びとから病気に関連する症状が少なくなり、通院する回数すら減ってくることをたびたび発見しています。

 本書によれば、心を乱す出来事(過去のトラウマやプレッシャーに満ちた試験など)についての考えや感情を表現することは「フラッディング療法」にも似ているといいます。これは恐怖症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療によく利用されるものです。


なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.195より


 人は自分の不快な経験に関する考えや感情に繰り返し直面し、描写し、追体験すると、さらけだす行為そのものがこうした思考を減らすようになる。悩みを伴うことが多い慢性的ストレスは、健康問題を引き起こすきっかけとなるので、これは体にとってもよいことだ。


 フラッディング療法の効果は、さらけだすことで体と心を実際にトラウマにつなぎとめて強調するため、「トラウマ自体を克服するのが困難になるのでは?」という理由でときに問題視されます。

 ただ、トラウマになった出来事に長期的に対処するための基本は、その衝撃的な出来事を繰り返し意図的に心に思い浮かべることであるのは事実です。これは精神病理学の研究や診療において証明されています。

 自分自身も過去に思い悩んだ時、無意識のうちに“自分の思いをノートに書き出す”ということを繰り返していました。ベッドのそばに一冊のノートを置き、日記のように今自分自身が考えていることをそこに綴る。それは決して誰に見せるわけでもなく、読み手を気にせず思いのままに自分の不安やストレス、感情の変化を綴ることができます。このノートを用いることで、かなり自分の考えを整理することができました。

 要するに、さらけだすことは体にも心にもよく、感情を言葉に表す、書き出すことでストレスに満ちた情報に脳が対処する方法が変わるのです。