頭の中で失敗をイメージすればするほど、実際に失敗してしまうものですか?

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よく頭の中で失敗することをイメージする、あるいは失敗することを考えれば考えるほど、実際に失敗してしまうという話を聞きます。これは本当にそうなのでしょうか?




大失敗することを選手が考えているときは、そうなる可能性が高いことをスポーツ科学者が証明しています。



 強い緊張や不安を感じる、あるいは大きなプレッシャーがかかる場面においては、

つい頭の中で失敗した時のイメージを想像してしまう

失敗しないようにと強く思うあまり、その状況を想像してしまう

 そんなことがよくあります。「失敗しないようにしよう」、「頭の中で考えている不安や心配ごとをなんとか取り除こう」。そうやって考えれば考えるほど、気付けば失敗することに意識がフォーカスしてしまう。不安や心配ごとにどんどんフォーカスしてしまう。結果としてその通りの望まない結果になってしまう。あなたにもそんな経験があるのではないでしょうか?

 では、普段から大きなプレッシャーと戦っているプロスポーツ選手の場合はどうでしょうか。

 プロのスポーツ選手の多くは、大きな試合のあとに行われるテレビのインタビューで冷戦沈着で落ちついた印象を与えます。試合を振り返って冷静にその状況を描写する。そして反省点や改善点、あるいは上手くいった点などをインタビューで答えます。

 そんな彼らの冷静な姿を見ていると、プレッシャーを上手くコントロールする、競技に関連した不安や思考をコントロールするのに非常に長けている、そんなふうに思えるかもしれません。

 ただ、スポーツ選手も私たちと同じ人間であることには変わりありません。


なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.227より


 スポーツ選手でもやはり失敗する可能性については考えると語っており、大失敗することを選手が考えているときは、そうなる可能性が高いことをスポーツ科学者は証明している。

 ゴルフでは習慣になった一連のパフォーマンスに否定的な独り言が入り込むと、簡単なパットでしくじるようになる。ダーツでは、的の中心をはずすところを想像すると、それが現実となる。

 バスケットボールでは、重要なフリースローで失敗するのではないかと心配すればするほど、大きな試合の最後の数秒でフリースローラインに立って、チームを落胆させることになる。

 要するにパフォーマンスのあいだに頭に浮かぶ思考やイメージをコントロールする能力がきわめて重要なのだ。


 本書で紹介されているとおり、たとえプロスポーツ選手であったとしても、大失敗することを考えているときは、そうなる可能性が高いといいます。これはスポーツ科学者によって証明されています。

 ただ、難しい数学問題を解く時とスポーツをする時では、そのパフォーマンスが低下するまでのメカニズムが少し異なります。


難しい数学問題を解いたり論理的な議論をする場合

 失敗する場面を想像してしまう、そういった心配ごと(あるいはそんな心配を抑制しようとすること)は、脳のなかで頭脳馬力であるはずのワーキングメモリー を使い尽くしてしまいます。

 このため、難しい数学問題と解いたり理論的な議論をする場合のようなワーキングメモリーを多く使うような場面では、心配ごとだけでワーキングメモリーを使い尽くしてしまう、本来なら頭のなかでいくつもの情報を同時に保つために使えるワーキングメモリーを不必要なものに無駄遣いしてしまう。こうなることで、高いパフォーマンスを維持することはできなくなってしまいます

 入り組んだ思考や推理が必要となる多くの場面では、失敗について考えてしまう、あるいはそれらの心配ごとを抑制しようとすることは知力をそらし、実行能力を損なうものになってしまうのです。

スポーツなどの複雑な運動技能の場合

 スポーツの場合は上記のケースと多少異なります。すべての活動がワーキングメモリーを使用するわけではありません。スポーツの場合、自分自身のことや演技や競技について懸念をいだいているとき、“最適な結果をだすために自分の動きをコントロールしようとしてしまう点”に問題があります。

 初心者であれば、細かい動き一つひとつに注意を払うことはよりよい結果を導きますが、プロや熟練者の場合はそうなりません。不安や心配のあまり、過度の注意を払ってしまうことが淀みないパフォーマンスに混乱をきたしてしまうのです。つまり、プロスポーツ選手の場合は心配が触媒となるものにその原因があるのです。