優秀な人間が本番で能力を著しく下げてしまう理由はなんですか?

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普段は非常に優秀な成績を残す人間が、プレッシャーや強い緊張を感じる本番になるとそのパフォーマンスを著しく下げてしまう理由はなんですか?なぜ能力が高く優秀な人間のほうがプレッシャーに弱いのでしょうか?





彼らが持つ高いワーキングメモリーが、プレッシャーに弱い要因を作っているのかもしれません。



なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.37より


 プレッシャーを受けたときに、いちばん悪い結果がでたのが、能力の高い学生ー最もワーキングメモリーの多い人ーだったと知ると、意外に思われるかもしれない。

 ワーキングメモリーの多い学生は当然のことながら、合同算術をただ練習問題として解いたときには、ほかの人たちよりも一割ほどよい結果をだしていた。ところが、プレッシャーがかかると、このような頭脳馬力の多い人の実行能力(パフォーマンス)はいちばん低い人と同レベルまで下がった。

 ワーキングメモリーが少ない人のパフォーマンスは、プレッシャーによってさらに下がることはなかった。なぜだろうか?(中略)

 ワーキングメモリーの多い学生は、正解をだすために引き算と割り算のステップを踏む確率が高いことを発見した。彼らにはこの方法で答えを計算するだけの頭脳馬力があるからだ。(中略)一方、ワーキングメモリーの少ない学生は簡便な近道に頼りがちだった。


 本書で紹介されているワーキングメモリーとは、ひらたく言えば“頭脳の馬力”のことです。ワーキングメモリーの量が、読解力や問題解決といった、学業に秀でるために不可欠な活動でどのくらいの能力を発揮することができるか、を予測するものになります。

 この実験で使われた合同算術には

 「引き算と割り算を何段階か踏み、計算の途中段階を記憶して解く多少複雑な方法(これだと正しい数値を導き出すことができる)」と

 「計算の途中段階を記憶せず、近道をして解く手軽な方法(ただし、いつも正しいわけではない)」

 の二つの解き方があります。

 実験結果では、ワーキングメモリー(頭脳馬力)の多い学生は“その方法で答えを計算できるため”前者の方法を選ぶ確率が高く、一方でワーキングメモリーの少ない学生はより簡便な後者の近道に頼りがちなことがわかりました。

 当然ですが、前者の“正しい数値を導き出すことができる”多少複雑な計算方法を使うワーキングメモリー(頭脳馬力)の多い学生のほうが、より高い成績を叩き出すように思われます。ただし、ここにストレスやプレッシャーという条件が加わると、結果はそうではなくなります。


なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.38より


 ストレスの少ない状況においては、より多くの知力を使うことでさらによい結果をだせる。だからこそ、ワーキングメモリーの多い人は練習問題で最も能力を発揮するのだ。

 ところが、プレッシャーを感じると、能力の高い学生は大半がパニックになり、実際には能力の低い学生がふだん使う近道に乗り換えていたのだ。能力の低い学生もやはりパニックにはなるが、ふだんからあまり労力のいらない手軽な方法に頼っているので(こうした方法は、本来、よく当たる勘にすぎない)、

 その方法を変えることなく、変えることはなく、ストレスのもとで結果がさらに悪くなることはなかった。


 普段は非常に優秀な成績を残す人間(ワーキングメモリーの多い人)が、プレッシャーや強い緊張を感じる本番になるとそのパフォーマンスを著しく下げてしまう理由はここにあると考えることができます。