あがり症治療にβ(ベータ)遮断薬が効果的だと聞きました。教えて下さい。

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あがり症治療にβ(ベータ)遮断薬が効果的だと聞きました。教えて下さい。



演奏会や講演会など、不安を感じる状況がやって来ることが事前にわかっていて、その状況における身体反応に悩まされている、その症状を抑えるのに役立つ薬です。ただ、使用にあたって注意事項も多くあるので十分に理解をして、医師に相談してから使用するようにして下さい。







他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.214より


 β(ベータ)遮断薬はもともと、狭心症、高血圧、不整脈を抑えたり、心筋梗塞を予防する薬剤として広く用いられてきた。他に、頭痛を鎮める効用も認められている。

 実は、β遮断薬を長年処方してきた心臓専門医たちは、かなり前から、この薬に心理面におけるある種の効果があることに気づいていた。しかし、実際にその効果が研究によって証明され、<社会不安>の症状であるに処方されるようになったのは、ごく最近(1960年代)になってからのことである。

 そして今日では、<社会不安>の症状である<身体反応>、とくに、動悸、震え、発汗、口の渇きなどを抑える薬として用いられるようになっている。


 β遮断薬は正式名称が「交感神経β受容体遮断薬(こうかんしんけいベータじゅようたいしゃだんやく」、少し専門的な用語が並びますが、交感神経のアドレナリン受容体のうちβ受容体のみに遮断作用を示す薬剤のことをいいます。β遮断薬やβブロッカーなどとも呼ばれます。

 別のよくあるご質問で、緊張すると汗をかくのは交感神経によるストレス反応であること、また赤面恐怖を改善する手術のひとつに、赤面恐怖のもととなる交感神経を取り除く外科手術があること、を紹介しましたが、

 交感神経は“その興奮が外界からのストレスに対する反応としての様々な身体の部位に表れます”。この交感神経の働きに対して“遮断作用を示す”のがβ遮断薬の主な効果です。

 交感神経の中には、アドレナリン受容体(受容体とは、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造のこと)と呼ばれるものがあり、このアドレナリン受容体もα1、α2、βの三種類と、更に3つずつのサブタイプに分類されています。

 このアドレナリン受容体のうち、β(ベータ)タイプは心臓や気管支、血管、脂肪細胞、消化管、肝臓や骨格筋など様々な器官に関与しています。このβタイプ(受容体)に遮断作用を示すことで狭心症、高血圧、不整脈を抑えたり、心筋梗塞を予防することができ、そのための薬剤としてβ遮断薬は広く用いられてきました。

 そして本書でも紹介されている通り、近年この薬の心理面におけるある種の効果が研究によって証明され、あがり症をはじめとする社会不安の症状に対して用いられるようになります。


他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.214より


 その効用は、とくに即効性の高さで知られている。たとえば、バイオリン奏者を対象に行われたある調査では、演奏の数時間前にβ遮断薬を服用することで、<あがり症>の症状が著しく軽減されることが証明されている。


 ただ、ここで注意していただきたいのは本書にも紹介されているとおり、β遮断薬を服用するにあたってはいくつかの注意が必要だということです。

 一部の心臓障害、ぜんそく、いくつかの他の薬剤の併用において禁忌があります。したがって、医師の診断を受けた上で処方してもらうようにしてください。

 さらに、β遮断薬に期待できる効果は、あがり症をはじめとする社会不安の症状をやわらげることだけであって、人間の能力を高めることではない、ということ。また、β遮断薬が高い効果を示すのは、遂行不安とあがり症に対してのみであるということ。

 演奏会や講演会など、不安を感じる状況がやって来ることが事前にわかっていて、その状況における身体反応に悩まされている時、その症状を抑えるのに役立つ薬だということを併せて理解しておいて下さい。