エクスポージャー法ではなぜ問題点をはっきりさせる必要があるのですか?

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あがり症をはじめとする社会不安を克服するための方法としてエクスポージャー法が有効だという話を聞きました。エクスポージャー法の一つ目のステップでは、なぜ問題点をはっきりさせる必要があるのですか?





問題を分割してとらえるようになれば、より能率よく問題解決に取り組むことができるためです。




他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.227より


 ある問題ーーとりわけ、長い間放置された複雑な問題は、ひとつのかたまりとして認識してしまうと、決して解決できないよに思われてくるものだ。

 たとえば、ひどく散らかった一軒の家を片づけなければならないとしよう。もし私たちが、その乱雑な家を、ひとつの大きな問題として、とにかくどうにかして片付けなくてはならない対象としてしか見られない限り、やる気を失ったり、いったいどうしたらよいのか途方に暮れたりしてしまうにちがいない。

 ところが、まずはこっちの部屋から手をつけよう、あのあたりは次にしよう、などと、問題を分割してとらえるようになれば、きっと能率よく動けるようになるはずである。


 社会不安を抱える人が何かから逃げ続けている限り、その怖れをなくすことは決してできません。そこで、あえて不安を感じる対象に立ち向かっていくことでその不安を軽減しようというのがこのエクスポージャー法です。このエクスポージャー法にかぎらず、この“大きなものを小さく分解してから取り組む”というのは様々なシーンで用いられる方法です。

 例えばビジネスの世界では、漠然とした大きな最終目標ではなく、常にある特定の限定された課題に到達することに全努力を集中させること、階段状に区切りをつけながら進んでのみ、目標をなしとげることができると言われ、仮に個々の段階に分割しなければ目標に到達することはできないといいます。

 また、長旅をする場合にも果てしない道を区分して、その一つ一つを望む目標そのものであるかのように思い込んで前進したほうが、よりうまくその行程を克服できると言われています。

 あがり症をはじめとする社会不安についてもこれと全く同じことが言えます。

 社会不安を抱えた相談者が初めて医師のもとでカウンセリングを受ける場合、いったい自分の問題をどのように医師に相談したらいいのか、途方に暮れてしまう人が多いといいます。例えばその相談者の相談内容が

「私はひどく内気なんです」

「どうもそわそわとして気持ちが落ち着かない」

「誰か他人と一緒にいると気が張ってしまう」

 などといった漠然としたものであれば、問題そのものを克服することは到底できません。もっと具体的に問題を把握すること、そして力を注ぐ方向性を見つけておかないと社会不安を取り除くことはできないのです。

 だからこそ、カウンセリングを行う医師の最初の仕事(自己でエクスポージャー法を試す場合は自分自身の最初の仕事)としては、その人が抱える漠然とした問題をどんどん分解していくこと。絡み合ったコードをほどくように、丁寧に整理して解きほぐす。どこに悩みのポイントがあるのかをはっきりさせることなのです。

 たとえば「誰か他人と一緒にいると気が張ってしまう」のであれば、それはいつ、どこで、誰と、何をしているときに感じるものなのかを明確にすることからはじめなければいけないということです。