プロの将棋棋士は大事な場面でどう緊張やあがりを回避するのですか?

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タイトルのかかった局など、プロの将棋棋士には大きなプレッシャーがつきまとうように感じます。彼らは大事な場面でどう緊張やあがりを回避するのですか?




将棋の格言に「手のない時には端歩(はしふ)を突け」というものがありますが、一つは、何をしたらいいかわからない時には「待つ」というものです。





迷いながら、強くなる(羽生善治著、三笠書房)P.26より

 将棋の格言の一つに「手のない時には端歩(はしふ)を突け」があります。何も有効な手段が見当たらない時には端の歩を一つ動かして様子を見るのがいいという意味です。

 また端歩は盤の端なので有効とは思えないのですが、実はとても価値のある一手だったりします。

 その一手で相手からの動きを止めたり、攻める時に幅が広がったりすることもよくあります。ですので、端歩のことを税金(いずれ払わなければならないもの)と表現することもあるくらいです。(中略)

 何をしたらいいかわからない時には、「待つ」というのも有力な手段です。あえて何もしないことによって状況が変わるのを待って、その時にアクションを起こすわけです。


 端歩(はしふ)とは、両筋の歩のこと。著者で将棋棋士の羽生善治さんは、この将棋の格言から「何をしたらいいかわからない時には、“待つ”というも有力な手段」だといいます。

 以前、「問題に着手する前に一歩離れてみること」は、関係のない情報やつまらないミスによって間違った方向へ進むのを防ぐうえで非常に役立つ、という話を紹介したことがあります。

 このFAQでは、大きなプレッシャーのなかで難しい問題を解き始める前に一度手を止める。そうやって状況を判断し、問題から数分間離れてみるだけでも、より適切な解決方法が見つかりやすくなるという話でした。

 有効な手段が見当たらない時に端の歩を一つ動かして様子を見るのも、大きなプレッシャーのなかで難しい問題を解き始める前に一度手を止めるのもどちらも本質的には同じことです。

 この「培養」期間によって、

無関係な細部にとらわれていた関心をそらすことができる

代わりに新たな方法で考え、別の視点から見られる

 結果として「なるほど」とひらめく瞬間が生まれ、成功へと結びつけてくれるのです。これは一例ですが、プロの将棋棋士は大事な場面でこういった方法を用いて緊張やあがりを回避し、高いパフォーマンスを維持しているのかもしれません。