時々、思い出したように部下に優しく接することが部下のあがり症改善を妨げると聞きました。詳しく教えて下さい。 |
時々、思い出したように部下に優しく接する(励ましたり、褒めたりする)ことが部下の自己評価を下げ、“低い自己評価”を原因とするあがり症の改善を妨げてしまうのは事実です。
あがり症と自己評価は非常に密接な関係にあり、あがり症を改善していくうえで重要なポイントの一つとなるのが自己評価です。自己評価の低さは、あがり症をはじめとする社会不安と密接な関係にあることが研究によって証明されています。
「あがり症の人≒自己評価の低い人」と考えた場合、時々、思い出したように部下に優しく接する(励ましたり、褒めたりする)ことが部下の自己評価を下げ、“低い自己評価”を原因とするあがり症の改善を妨げてしまうのは事実です。
例えば、下記の表(上から六段目)にもある通り、管理職の立場にある人間が「時々、思い出したように部下に優しく接する(励ましたり、褒めたりする)」、といった態度をとれば部下の自己評価を大きく下げかねません。そんな態度は、あがり症を改善していくうえで大きなマイナスとなるのです。
こうなれば、部下は日頃、その上司に対して否定的な判断を下していたのはまちがいだったのではないかと思うようになります(その結果、心理的な防壁を築くことができにくくなります)。当然、こういった状態で部下は、より良い自己評価を得ることはできません。
時々、思い出したように部下に優しく接する(励ましたり、褒めたりする)ことは、部下の自己評価を下げ、部下のあがり症改善を妨げてしまいます。注意が必要です。
部下の自己評価を下げる方法
管理職の態度 | 部下への自己評価の影響 |
急に機嫌を悪くしたり、突然、仕事の成果に対する判断基準を変えたりして、何が起きるかわからないといった感じを抱かせる | 何が起きるか予測がつかないので、部下はいつもぴりぴりして不安を抱えていなければならない(こういった状態では自己評価は高くならない) |
部下の行動ではなく、人格を批判する | 部下は<自分は駄目人間だ>と思い、失敗したのはすべて自分がいけないせいだと考えるようになる |
部下が過ちを犯したら、必ず激しく叱責する | 部下は失敗というのは取り返しのつかないものだと思うようになる |
成功しても部下を褒めず、その功績を自分のものにする | 部下は努力しても無駄だと思うようになる |
時々、思い出したように部下に優しく接する(励ましたり、褒めたりする) | 部下は日頃、その上司に対して否定的な判断を下していたのはまちがいだったのではないかと思う(その結果、心理的な防壁を築くことができにくくなる) |
部下の仕事に否定的な評価を下す時に、個人的な感情を表に出す(「きみの仕事にはまったくがっかりさせられた」) | 部下はその上司に対して罪悪感を抱くようになる(期待に応えられなかったのは、自分が悪い) |
部下にプレッシャーを与える。たとえば成功するための手段を与えずに、ただ「きみを信頼している」と言う | 部下は不安を感じる(「はたして、私は責任を果たせるのだろうか?」 |
つねに左遷や解雇をちらつかせる | 部下は安心して動けなくなる(状況次第で自分の身はどうなるかわからない) |
成功している部下がいたら、時々失敗するように仕向ける | 部下は一定以上の自己評価を持てなくなる。また、昇進の希望をなくす |
自己評価の心理学 なぜあの人は自分に自信があるのか(クリストフ・アンドレ、フランソワ・ルロール著、紀伊國屋書店)より