抗うつ剤があがり症をはじめとする社会不安に効果があると聞きました。これは本当ですか?また、自分はうつではないのですが、なぜ抗うつ剤が有効をなのですか? |
多くの研究によって社会不安、とりわけ重度の社会不安に対する抗うつ剤の効果がすでに証明されています。ただ、その取り扱いには十分な注意が必要です。
他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.218より 多くの研究によって<社会不安>、とりわけ<全般性の社会恐怖>や<回避性人格障害>のような重度の<社会不安>に対する抗うつ剤の効果はすでに証明されている。しかも、不安な感情、不自然な行動、ネガティブな考え方など、あらゆる症状においてポジティブな効果をもたらすというのだ。 |
「社会不安に対してなぜ抗うつ剤なのか?」
「自分はうつ病ではないのになぜ抗うつ剤なのか?」
社会不安に悩まされるあなたはもしかしたらそんなふうに不思議に思っているかもしれません。ただ、本書でも紹介されているとおり、多くの研究によってあがり症をはじめとする社会不安に対して(中でもより重度の全般性の社会恐怖や回避性人格障害に対して)抗うつ剤が効果的なことはすでに証明されています
ただ、すべての抗うつ剤に同じ効果が期待できるわけではないので注意が必要です。
たとえば、従来の抗うつ剤、成分の化学構造の特徴から「三環系抗うつ薬」というタイプのもの(抗うつ薬の種類の一つで第1世代、第2世代抗うつ薬とも分類される。ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質に関与する神経細胞受容体に作用し、遊離するノルアドレナリン、セロトニンを増やす働きをします)は、多くの研究結果から判断するとあがり症をはじめとする社会不安に対してそれほど効果がないことがわかっています。
一方で、「モノアミン酸化酵素阻害薬(MOAI)」というタイプのもの(抗パーキンソン薬の分類の1つで、モノアミン酸化酵素の働きを阻害することによって、脳内のドーパミンなどの物質を増やす作用をする薬剤の総称。昔はうつ病の治療薬として使われていたが、その激しい副作用と扱いの難しさから、現在ではパーキンソン病の治療にのみ使われている)は、とくに重度の社会不安の改善に適していると言われています。
そして、現在注目を集めているのが「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と呼ばれる新しいタイプの抗うつ剤です。
他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.218より この薬の特徴は、従来の抗うつ剤のようにさまざまな神経伝達物質に作用するのではなく、心理的な障害にもっとも関わりが深いと言われるセロトニンだけに作用し、神経終末の部分でセロトニンの量を正常に近い状態にするところにある。
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本書によれば、とりわけSSRIの一種であるパロキセチンは、数多くの研究によって社会恐怖の治療への効果の高さが認められています。
ただ、抗うつ剤を日常的に服用することについては、厳重な注意が必要とされることも忘れないで下さい。抗うつ剤の効果は多くの研究で既に証明されていますが、いくつもの副作用を引き起こしうる、強力な薬剤であることもまた事実です。
抗うつ剤の服用は、β遮断薬と異なり短期間では終了しません。短くても半年から一年、あるいはそれ以上継続する必要があります。
また数ヶ月で効果が現れた場合でも、それに甘んじて服用をやめることなく、根気強く続ける必要があります。リバウンドのリスクもあります。抗うつ剤の服用には様々な困難が伴うため、医師とよく相談したうえでその服用方法を決めてください。