過去のトラウマがあがり症につなることはありますか?

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私はトラウマになるような体験をしたつもりはないのですが、いつのまにかあがり症になっていた気がします。過去のトラウマがあがり症につながってしまうことはありますか?




トラウマが強烈な体験の場合、それだけが原因であがり症をはじめとする社会不安になることがあります。また、それ以外にもある出来事をきっかけに潜在的な社会不安が外に表れる場合もあります。






他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.199より


 もし、そのトラウマが非常に強烈な体験であった場合、他の要因がまったくなくてもそれだけで<社会不安>の原因になることがある。(中略)そしてももうひとつの可能性が、<社会不安>の他の要因をすでに抱えていたのが、ある出来事をきかっけに一気に外に表れるようになったパターンである。

 それはたとえば、教師からクラスメートたちの前で批判されたり、友だちから失敗をからかわれたりといった、わりと日常的な出来事であることも少なくない。

 どの出来事自体は、第三者から見ればたいしたことないと思われがちだが、本人がすでに別の要因を隠し持っていたために、一気に<社会不安>が外に表れるきっかけになってしまうのである。


 別のよくあるご質問で、あがり症をはじめとする社会不安については、人間が成長する過程で先天的要因と後天的要因が複雑に絡み合って引き起こされる、その要因のうち過去の経験など「心理学的要因」も社会不安を感じるかどうかに多いに関係してくるという話を紹介しました。

 あがり症をはじめとする社会不安引き起こす後天的な要因である「心理学的要因」ですが、大きく二つに分けて考えることができます。そのうち一つが家庭環境や親の影響、そしてもう一つが心的外傷、つまりトラウマ(日本では、ジークムント・フロイトの著作の強い影響から心的外傷を“トラウマ”と呼ぶ。これは古代ギリシア語で「傷」の意)です。

 本書におけるトラウマの定義は「ある一定の状況に置かれると、いつも強い恐怖を感じたり、身体的反応を起こしたりしてしまう。そうなるきっかけを作った出来事」としています。


1.トラウマが非常に強烈な体験の場合、それだけが原因になる。

 典型的な心的外傷の原因は、児童虐待(幼児虐待)や性虐待を含む虐待、強姦、戦争、犯罪や事故、いじめ、暴力、アカハラ、パワハラ、セクハラを含む悲惨な出来事、実の親によるDV、大規模な自然災害などがあります。

 これらのトラウマが非常に強烈な体験であった場合、他の要因がまったくなくてもそれだけで、あがり症をはじめとする社会不安の原因になることがあるといいます。この場合、トラウマとなるような体験以外、社会不安をもたらす要因を何も抱えていないケースが多いといいます。

2.ある出来事をきかっけに一気に外に表れるようになったパターン

 もう一つが既に遺伝や家庭環境などの別の要因で社会不安が潜在的に存在している、そこへたまたまトラウマとなるような体験が起爆剤となってしまい、社会不安が一気に外へ表れるようになるというパターンです。

 後者の場合、起爆剤となるトラウマ自体は比較的日常的な出来事であることが多いといいます。第三者から見ればたいしたことがないことでも、潜在的に別の要因を隠し持っている人は、社会不安が一気に外に表れるきっかけとなってしまうのです。