認知行動療法について詳しく教えて下さい。

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あがり症をはじめとする社会不安に対して認知行動療法が有効であると聞きました。認知行動療法について詳しく教えて下さい。



その人のものの見方(認知)と行動様式を変えるための治療法です。あがり症をはじめとする社会不安の改善に関しては、認知行動療法の信頼性がもっとも高いことが明らかになっています。





他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.221より


 認知行動療法とは、その人のものの見方(認知)と行動様式を変えるための治療法である。

 <社会不安>を含む多くの心理的な障害は、非合理的な行動や考え方が身について、どうしてもやめられなくなってしまうことを原因としている。だからこそ、認知行動療法は<社会不安>の改善に広く用いられていて、さまざまな研究によって有効性も証明されているのだ。


 別のよくあるご質問のなかで、あがり症や対人恐怖を根本的に治癒していくには、“強い思い込み”を正しく修正すること。多様な価値観を受け入れ、幅広く柔軟なものの見方ができるようになることが必要であり、これを目標としているのがまさに“認知療法”であると紹介しました。

 このFAQでも紹介しましたが、認知行動療法の「認知」とは“私たちが生活する上でごく自然に心のなかに生まれてくる思考、あるいはものの見方のこと”です(別の言い方をすれば、心のなかのつぶやき、あるいは、自分自身との対話のようなものとも紹介しました)。 この“思考”や“ものの見方”、あるいは行動様式を変えるため“認知行動療法”と呼ばれています。

 そして、この認知行動療法では、特徴として「その障害が起きた理由の解明は二の次とされている」という理念があります。


他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.221より


 精神分析療法で重視されている「その障害が起きた理由の解明」は、認知行動療法では二の次とされている。

 認知行動療法の理念においては、「たとえ理由を探し当てたところでその障害が改善されるとは限らない」とされているためだ。一部の医師たちの間で言われているような、「理由がわからないままだと、治療終了後にリバウンドが現れたり、別の障害が生じたりする」という考え方も、今のところいかなる研究によっても正当性は証明されていない。

 つまり、<社会不安>を改善するには、その人の幼少時代の記憶や深層心理を探っていくよりも、もっと具体的で現実的な部分にはたらきかけるほうがずっと効果的なのである。


 あがり症をはじめとする社会不安を改善するための心理療法には「精神分析療法」と「認知行動療法」の大きく二つが存在しています。本書でも紹介されていますが、この「認知行動療法」の理念に関しては精神分析療法派と認知行動療法派、両者のあいだで長年議論がされてきました。

 精神分析療法派は「どうしてそうなったのか、その原因や理由がわからないまま症状だけ治しても、ちょっとしたきっかけで再発してしまう」といい、一方で認知行動療法派は「それなら、精神分析療法派は本当に原因を取り除いていると言えるのか?治療の効果の有無を判断する基準さえ定められていないくせに」と反論します。

 精神分析療法は、対人関係療法や行動療法を取り入れたもの、催眠療法の技術を盛り込んだものなど様々なバリエーションが誕生しています。ただ、現時点においては、あがり症をはじめとする社会不安の改善に関しては、認知行動療法の信頼性がもっとも高いことは確かです。

 また、

医師と相談者との間に高い信頼関係や協力関係を築いていく

医師が相談者に積極的に関わっていく

医師が一方的に押しつけるのではなく一緒に話し合って決める

 など、認知行動療法のこういったやり方が人気の理由となっています。またこういった療法は、その後もリバウンドを起こすことなく効果が長続きする理由のひとつともいえます。精神分析療法と認知行動療法の違いを簡単にまとめましたので、併せてこちらも参考にしてみて下さい。