プレッシャーをものともしないトライアード状態について教えて下さい。

あがり症克服方法  > よくあるご質問(FAQ)  > プレッシャーをものともしないトライアード状態について教えて下さい。


プレッシャーをものともしないトライアード状態というものがあると聞きました。トライアード状態について詳しく教えて下さい。




トライアード状態とは、“意識”と“下意識”と“セルフイメージ”の三つのバランスがうまく協調しているときのことをいいます。




本番に強くなる メンタルコーチが教えるプレッシャー克服法
(白石豊著、筑摩書房)P.27より


 “トライアード状態”というのは、“意識”と“下意識”と“セルフイメージ”の三つのバランスがうまく協調しているときのことである。こうなるとたいていのことはやすやすとできてしまう。

 射撃選手がトライアード状態に入ると、“意識”は10点を取ることに完全に集中する。そして引き金を引くまでの一連の技術的なことは、すべて“下意識”がコントロールし、さらに「的のど真ん中を打ち抜くのが私らしいという“セルフイメージ”に後押しされて、当たり前のごとく10点を取るというわけである(中略)

 このモデルはすべての活動が同じ大きさになっており、そこにトライアード状態が出現している。こうなるとどんなにプレッシャーがかかっていようと関係ない。結果はすべてうまくいく。

 しかし現実には、これら三つのバランスは取れていない(中略)結果になりがちである。


 本書によれば、トライアード状態は下記のようなモデルを使って示すことができるといいます。

 トライアード状態

 三角形のことを英語でトライアングル(triangle)と言うように、“tri”は、英語の3を意味する“three”ど同義です。トライアード(triad)も、もともとは、3人組、三和音(化学の世界では“3価元素”、軍事の世界では、爆撃機・潜水艦発射ミサイル・大陸間弾道ミサイルの三元戦略核戦力)を意味します。

 スポーツ心理学の世界で使われる場合のトライアード(もしくはトライアド)は、“意識”と“下意識”と“セルフイメージ”の三つを意味し、この三つのバランスがうまく協調しているときのことを“トライアード状態”といいます。 そして、本書で紹介されているとおり、この状態になるとどんなプレッシャーがかかっていようと関係なくなります。

 別のよくあるご質問のなかで、練習ではフリースローを85%成功させるバスケットボール選手でもプレッシャーにさらされると、ボールをゴールに入れるというふだん無意識のうちにやっている行動について、(自分の手首の角度やボールを放すタイミングに神経を集中させるなど)考えすぎてしまう。これが結果として「分析による麻痺」を起こし、勝敗を決めるフリースローははずすかもしれない、という話を紹介したことがありますが、

 このバスケットボール選手の場合でいう、“フリースローにおけるふだん無意識のうちにやっている行動”というのが、本書で述べられている“下意識”をいいます。

 下意識(ふだん無意識にやっている行動)を意識しすぎてしまうということは、本書でいうトライアード状態のなかで、過度に“意識”の円が大きくなることを意味します。こうなるとトライアード状態のバランスは崩れてしまう。結果としてパフォーマンスは著しく低下します。まさに「分析の麻痺」に陥ってしまうのです。

 

 また、ここで言われているセルフイメージの円は、別のよくあるご質問で紹介したエフィカシー(自己評価)と非常に良く似ています。

 あがり症をはじめとする社会不安とエフィカシー(自己評価)は密接な相関関係にあることが研究によって証明されているという話を紹介したことがありますが、セルフイメージやエフィカシー(自己評価)の円が過度に小さく(あるいは大きく)なってしまえば、誤ったセルフイメージや自己評価から、トライアード状態を崩してしまう。そして、高いパフォーマンスは維持できなくなってしまうのです。