なぜ有名な選手が大事な試合でPKやフリースローを外してしまうのですか?

あがり症克服方法  > よくあるご質問(FAQ)  > なぜ有名な選手が大事な試合でPKやフリースローを外してしまうのですか?


なぜ有名な選手が大事な試合でPKやフリースローを外してしまうのですか?



その理由は、過度に自意識を高めてしまうことにあります。



なぜ本番でしくじるのかープレッシャーに強い人弱い人
(シアン・バイロック著、河出書房新社)P.249より


 ノルウェーのスポーツ科学者ゲイル・ヨルデットによれば、第一線で活躍していることもチョークする確率を高めうる。

 彼は過去25年間のFIFAワールドカップ(1982年〜2006年)、欧州選手権(1967年〜2004年)、UEFAチャンピオンズリーグ(1996年〜2007年)で行われたすべてのPK戦からのビデオ画像を分析した。

 合計で298人の選手による366回のペナルティーキックが分析された。当然のことながら、こうした高いレベルではシュートはたいがい入るので、全体で約74%のシュートが決まった。ところが、最もシュートを決めたのは、かならずしも予想された選手ではないことをヨルデットは発見した。

 世間で最もスーパースターとして見なされている選手ーFIFAや南米の年間最優秀選手賞のようなサッカーの栄誉ある賞の受賞者ーは、まだこれらの主要な賞はもらっていないけれども、のちに受賞することになる選手にくらべて、PK戦では実力を発揮できていなかった。

 その時代のスーパースターのシュート率は65%程度であるのにたいし、将来のスーパースターは90%近かった。

 ヨルデットは、すでにスーパースターである選手は、まだトップまで上りつめていない選手にくらべて、高度なプレーをしなければならないというプレッシャーをより感じているためだと考える。


 ※チョークとは息が詰まる、という意味から転じて、緊張して硬くなる、失敗するの意。 ふだん無意識のうちにやっている行動について、考えすぎた場合に起こる。「分析による麻痺」と呼ばれるもの。

 本書によれば、スーパースターはファンからの愛情だけでなく、成功にともなう多大な期待も背負っており、そのためにいっそう自意識が高まることになるといいます。

 別のよくあるご質問のなかで、練習ではフリースローを85%成功させるバスケットボール選手でも、ボールをゴールに入れようとして、自意識を高めてしまう(自分の手首の角度やボールを放すタイミングに神経を集中させる)ことで、勝敗を決めるフリースローははずすかもしれない、という話を紹介したことがありますが、

 サッカー界のスーパースターたちも、その自意識が高くなれば、彼らは自分のプレーによりいっそうの注意を傾けるようになります。

 結果として、いつもなら意識しないような細部にまで意識を研ぎ澄ませてしまい、いつものプレーができない。何度も練習しているはずのペナルティーキックが枠に飛ばない。こうして自意識が高くなることが、残念ながらシュートがゴールをそれる結果につながってしまうのです。

 これが有名な選手であればあるほどPKを外してしまう大きな理由です。