失業することはあがり症を悪化させますか?

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失業することであがり症は悪化するという話を聞きました。これは本当ですか?失業することはあがり症を悪化させますか?



“より良い自己評価を形成していくことがあがり症を改善する”と考えた場合、失業は自己評価にマイナスの影響を与え、症状を悪化させることがあります。




 あがり症と自己評価は非常に密接な関係にあり、あがり症を改善していくうえで重要なポイントの一つとなるのが自己評価です。自己評価の低さは、あがり症をはじめとする社会不安と密接な関係にあることが研究によって証明されています。

 “より良い自己評価を形成していくことがあがり症を改善する”と考えた場合、失業は自己評価にマイナスの影響を与えるため症状が悪化することがあります。


自己評価の心理学 なぜあの人は自分に自信があるのか(クリストフ・アンドレ、フランソワ・ルロール著、紀伊國屋書店)P.176より


 失業と自己評価の間には密接な関係がある。

 社会的な地位や人間関係、収入など、失業者はさまざまなものを失う。これが精神の安定に影響を与えないはずがない。

 そういったなかで、職を失った人が特に苦しむのが<自分は価値のない人間なのではないか>という思いである。

 実際、失業者のなかには会社を首になったことを家族にも言えなかったり、会社に行っていないことを近所の人に知られないように昼間は絶対外に出ないという人がたくさんいる。


 社会的地位は容姿や学歴などとともに、自己評価の基準となる大切な要素であり、仕事をするということは社会的な地位を手に入れる一つの方法です。

 これは裏を返せば、仕事をクビになることや失業することは自己評価の基準となる大切な要素を失うことを意味します。これが失業が自己評価を下げ、低い自己評価を原因とするあがり症を悪化させる要因の一つです。

 そして、低い自己評価を原因とするあがり症を悪化させるもう一つの要因が「失業が“自分の能力不足を実感させるため”」だと言われています。


自己評価の心理学 なぜあの人は自分に自信があるのか(クリストフ・アンドレ、フランソワ・ルロール著、紀伊國屋書店)P.177より


 社会学者のピエール・ブルデューは失業についてこう書いている。

 《失業すると、将来が不安になる。そこで職を失った人は自分には何ができるかあらためて考えさせられるのであるが、そのうちのある人々はそれまで曖昧にして目をつむってきた真実、つまり能力が不足しているという真実に気づくことになる》。

 自分の能力の不足を思い知らされるー失業が辛いのはそのためである。


 高い自己評価を維持するには、自己評価の栄養源である「愛されているという気持ち」と「能力があるという気持ち」を定期的に補給するのがポイントである、という話を紹介したことがあります。

 失業はこの大切な栄養源のうち、後者の「能力があるという気持ち」の補給をストップさせてしまいます。これが高い自己評価を維持することを難しくし、結果として低い自己評価を原因とするあがり症をさらに悪化させてしまうのです。

 本書によれば、失業は学業の失敗に似ているといいます。もともと自己評価が高く、自信を持っている人は、たとえ失業したとしても辛い事態に耐え自己評価を維持することができます。

 一方で、一般的に自己評価が低く自信がない傾向にあるあがり症の人は失業が直接的に自己評価を下げ、あがり症をさらに悪化させる要因となってしまうのです。