あがり症をはじめとする社会不安を改善しようとした場合、薬物療法をすすめる方もいれば認知行動療法などの心理療法をすすめる方もいます。結局のところ薬物療法と心理療法のどちらがより効果的で優れていますか? |
薬物療法と心理療法を「どちらがより優れているか」と対立させるのではなく、双方の特徴をよく知った上で併用することこそが、もっとも高い効果をもたらすやり方になります。
薬物療法に関しては、別のよくあるご質問の中で下記のように紹介しました。例えば薬物療法の一つの抗うつ剤の場合、
抗うつ剤を日常的に服用することについては、厳重な注意が必要とされる。抗うつ剤はいくつもの副作用を引き起こしうる、強力な薬剤であることもまた事実であり、その服用は短期間では終了しない。短くても半年から一年、あるいはそれ以上継続する必要がある また数ヶ月で効果が現れた場合でも、それに甘んじて服用をやめることなく、根気強く続ける必要があり。リバウンドのリスクもある。
このように、抗うつ剤をはじめとする薬物療法の服用には様々な困難が伴うため、心理面でのサポートなしに行うことは難しいと考えられています。薬物療法を行っている人を、精神的にバックアップし、随時的確なアドバイスを与えることのできる存在が必ず必要なのです。
また、別のよくあるご質問で、あがり症をはじめとする社会不安に対する薬物療法は、「克服へ向かってきっかけを与えること」が主な効用であって、根治(病気などを根本から完全になおすこと)のためのものではありません。薬を服用するだけで、社会不安が治るというケースはほとんどない、ということも紹介しました。
薬剤に期待できるのは、“障害を取り除くことではなく、感じる不安を軽くするということだけ”なのです。
他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.223より 薬剤に期待できるのは、障害を取り除くことではなく、感じる不安を軽くすることだけである。いや、もちろんそれだけでも、<社会不安>を乗り越える大きな一歩となるだろう。
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なお、薬物療法に関してはよくあるご質問「あがり症に薬物療法が有効だと聞きました。具体的に教えて下さい。」を、心理療法の一つである認知行動療法についてはよくあるご質問「認知行動療法について詳しく教えて下さい。」を併せて参考にしてみて下さい。