認知行動療法を行う上で重要なポイントなどはありますか?

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認知行動療法の信頼性がもっとも高いことは理解できました。実際に認知行動療法を行う上で重要なポイントなどはありますか?



認知行動療法を行う上での重要なポイントのひとつ、「逃げ出さない」ことです。




他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学(クリストフ・アンドレ、パトリック・レジュロン著、紀伊國屋書店)P.225より


 認知行動療法を行う上での重要なポイントのひとつ、「逃げ出さない」ことについて述べていこう。ここで取り上げるのは、<社会不安>を感じる人の行動様式を改善するための訓練で、<行動療法>と呼ばれている方法である。

 <社会不安>を感じる人は、不安を感じる状況から逃げ出し、自分だけの小さな世界に閉じこもろうとしがちである。そのおかげで不安を少しでもやわらげることができるので、無意識のうちにそういう行動様式を確立させてしまうのだ。

 したがって、この傾向から抜け出すための第一段階として、不安を感じる状況から「逃げ出さないこと」が大切になってくる


 何の治療もセラピーも行わないのに、あがり症をはじめとする社会不安が改善されてしまうというケースがまれにあります。これは裏でどんなからくりが起きているかといえば、まさに本書で述べられている「逃げ出さない」ということが結果として社会不安を改善しているのです。

 何の治療もセラピーも行わないのに、あがり症などの社会不安が改善される場合、それは患者自身が“意図せず不安に感じる状況に立ち向かっていったから”であることが少なくありません。

 別のよくあるご質問で、内気な子が初めて幼稚園に行く時は、古代ローマの剣士が闘技場で猛獣に立ち向かうのと同じくらいのストレスを感じているという話を紹介しました。

 確かに初めて幼稚園に行く子どもは強いストレスを感じます。子どもを育てた経験のある方なら容易に理解できると思いますが、子どもの多くは幼稚園の入園式を前に前日はかなりその機嫌が悪くなるはずです。一方で、いざ幼稚園に行き始めると、そんな不安はどこかへ行ってしまう。こんなケースはよくあります。これも、子ども自身が“不安に感じる状況に立ち向かっていったために改善された”と考えることができます。

 また、親が子どもに対して他人と会ったり話をしたりする機会を作ることで、人見知りや内気のような軽い社会不安はやがて消えていってしまうことも紹介しました。

 ただ、大人の場合は少し勝手が違ってきます。

 いったん形作られたスキーマが揺るぎない堅固なもので、心理療法をもってしても、くつがえすのは相当難しいという話を紹介しましたが、同様に大人の場合はいったん確立してしまった行動様式を変えるのはなかなか難しいと言われています。

 それを可能にするのがエクスポージャー法(曝露療法)と呼ばれるものです。社会不安を抱える人が何かから逃げ続けている限り、その怖れをなくすことは決してできません。そこで、あえて不安を感じる対象に立ち向かっていくことでその不安を軽減しようというのがエクスポージャー法です。