親が子に過度な期待をするのは子にとってよくないのでしょうか。子供に期待することでネガティブな要素は生まれてしまうのでしょうか?親の過度な期待が子をあがり症にしてしまうのでしょうか? |
両親の望みが強制的で、子供の能力や希望を考えにいれたものでない場合、子供は期待に応えられないことに苦しみ、あがり症と密接な関係がある本人の“自己評価”を下げてしまいかねません。
自己評価の心理学 なぜあの人は自分に自信があるのか(クリストフ・アンドレ、フランソワ・ルロール著、紀伊國屋書店)P.19より 両親はほとんど無意識のうちに、自分たちができなかったこと、果たせなかったことを子供にさせようとすることがある。
|
※グランゼコールは、フランス独自の高等専門教育機関。 グランゼコールはフランスに200校ほどあり、いずれも専門分野においての高度専門職養成機関としての役目を果たしている。
別のよくあるご質問のなかで、プロスポーツ選手は高いエフィカシー(自己評価)を維持することで緊張やあがりをコントロールしている、という話、そして、あがり症をはじめとする社会不安とエフィカシー(自己評価)は密接な相関関係にあることが研究によって証明されている、という話を紹介したことがあります。
また、どんな自己評価を抱いているのかによって物事を積極的に行ったり、困難にも勇気を持って立ち向かうことができる、という話も紹介しました。
これらのFAQをみてもわかるように、“あがり症を改善していくうえで重要なポイントの一つとなるのが自己評価”です。
そんなあがり症と密接な関係にある自己評価ですが、親の過度な期待がその自己評価を下げてしまう原因にもなりかねませんので、注意が必要です。
以前、遺伝という土台の上に積み重ねられていく地層となるのが家庭環境や個人の経験であり、幼い頃にどんな親からどんなふうに育てられたか、教育方針や愛情のもらい方、親の言動などは、本人が将来社会不安を感じるかに多いに関係してくる、
また、自分を愛することができるかどうかは、子供の頃に家族からどれほど愛情の糧を受けたかによって決まる部分が大きいと言われている、という話を紹介しましたが、同様に、“子供の自己評価も親に多大な影響を受ける”ということがわかっています。
本書にもあるとおり、多くの両親はほとんど無意識のうちに、自分たちができなかったこと、果たせなかったことを子供にさせようとする傾向にあります。
私の親は二人とも大手外資系企業に勤務していましたが、欧米社会において教養なきものは尊敬されません。そのため、両親は私と姉に対して音楽を習わせることや、演劇や芸術に触れる機会を作ることなど、教養をつけさせようと積極的にはたらきかけていました。まさに、自分が果たせなかったことを子供にさせようとしていたのです。
もちろん、こういった両親の行動をすべて否定するわけではありません。本書にも述べられているように「それが強制されることなく、また子供の能力や希望を考えにいれたうえで果たされるのであれば問題ない」のです。
ただ、現実はそうでない場合も多くあります。両親の望みが強制的で、子供の能力や希望を考えにいれたものでない場合、子供は期待に応えられないことに苦しんでしまいます(私もそうでした)。
こうなると、あがり症と密接な関係がある本人の“自己評価”を下げてしまいかねません。子は親の期待に応えられるかどうか不安で自己評価が下がってしまうのです。
子供への教育論は様々ありますが、ご参考にして頂ければと存じます。